こんにちは。
先日、2019年に訪れたフランスでの旅行について、ざっくりと振り返りました。

地元のワイン好きの方たちと行ったフランス。
行きつけのワインバーのソムリエさんとともに白ワインの産地を中心にめぐり、ワイナリー見学や観光を楽しむ、という企画。
今回は、旅の初めに行ったシャンパーニュ地方の都市「ランス」でのワインセラー見学について。
実際に行ってみて、感じたことや注意点などをまとめます。(めっちゃ長文になってしまいました…)
世界遺産とシャンパンの街。シャンパーニュ地方の中心都市ランス(Reims)

ランスは、フランスの北部にあるシャンパーニュ地方マルヌ県の都市。
シャンパーニュ地方では最も人口が多く、中心的な街です。
パリのシャルル・ド・ゴール空港から、TGV(フランス新幹線)で約45分。
ノートルダム大聖堂をはじめ、数多く世界遺産の残る魅力的な土地。
そして、なんと言ってもシャンパンですよ!!!

高品質なシャンパンづくりに適した環境
シャンパーニュの厳しく冷涼な気候は上質なシャンパンの醸造に適しています。
この環境がブドウにキレのある酸をもたらし、地下の冷たく湿った石灰質のカーヴが長期熟成を可能にしているのだそう。
ワイン貯蔵庫のことをフランス語でカーヴ(cave)と呼びます。
ワインの保管に適した環境は、温度11~15度、湿度70〜75%ほど。
地下であればその条件を自然に満たせるため、カーヴは主に地下につくられます。
シャンパーニュ地方には大小様々のメゾンが点在し、その数は約5000軒にものぼるとか。
中でもランスはシャンパン醸造の中心地として名高く、数多くの有名メゾンが集まっているのです。
この地方の農工業システムや美しいブドウ畑の景観は、
「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」として2015年にユネスコ世界遺産に登録されています。
「メゾン(maison)」はフランス語で「家」「建物」の意。
シャンパーニュ地方では、シャンパン製造会社、ワイナリーのことを「メゾン」と呼びます。
「シャンパンハウス」「シャンパンメーカー」とも。
シャンパーニュ地方のメゾンは大規模経営の会社が多く、
多くのぶどうを農家から購入して醸造しています。
このような大規模なシャンパンメーカーは「グラン・メゾン」(grand maison)とも呼ばれます。
〈参考:ニュージーランドワインラバーズ〉
この旅では、以下3社のメゾンを見学。
・テタンジェ社 Taittinger
・マム社 Mumm
・ポメリー社 Pommery
すべて世界的に有名なワイナリーであり、その建物や施設にも独自の個性とポリシーが確立されています。
三社三様で、ものすごく見応えがありました!
シャンパンの定義と基礎知識

上品に立ち上り、細かく弾けて消える泡。
キラキラと輝く、淡く美しい色味。
メゾン見学について記す前に、シャンパンの基礎知識をちらっとだけ。
シャンパンとスパークリングワインの違い
日本では、発泡しているワインはすべて「スパークリングワイン」と呼ばれます。
その中で、フランス シャンパーニュ地方でつくられたもののみが「シャンパン」を名乗ることができます。
シャンパンは、スパークリングワインの王様として扱われています。お値段もお高め。
※「シャンパーニュ」「シャンペン」とも呼ばれますが、これらはすべて同じものを指します。呼び方だけの違いです。
(このブログでは「シャンパン」で統一します)
シャンパンの醸造に使われるブドウの主要品種
醸造に使われるブドウの主要品種は、
ピノ・ノワール(黒ブドウ)、ムニエ(黒ブドウ)、シャルドネ(白ブドウ)の3品種。
伝統の製造方法「瓶内二次発酵」
「一度白ワインをつくり、それを瓶に詰めてその瓶内でもう一度発酵させる」という、非常に手間のかかる製法が「瓶内二次発酵」。
この方式で製造されたものが、シャンパンです。
〈参考:エノテカオンライン〉
つまり、全てのシャンパンは「シャンパーニュ地方で、特定のブドウ品種を使い、瓶内二次発酵という製法で生産されている」ということです。
「テタンジェ」「マム」「ポメリー」〜メゾン見学とテイスティング
見学の所要時間、価格
いよいよメゾン見学です。
三社とも、所要時間は約1~2時間。
ツアー代金は、いただくシャンパンの種類やコースによりますが、だいたい20ユーロ前後でした。
テタンジェ Taittinger
一軒めはテタンジェです。
ノーベル賞授賞式の晩餐会でよく使われる、有名な会社です。


シンプルで清潔感のある白い建物。
中に入ると、とてもスタイリッシュ。
毎年デザインが変わる「テタンジェ・コレクション」というシャンパンも。


そして、何と言っても「シャンパーニュ地方で最も美しいゴシック様式の建造物」と評される地下カーヴがすごい!!
地下18メートル。サン=ニケーズ修道院の遺跡
テタンジェ社の地下は、13世紀建設のサン=ニケーズ修道院の遺跡になっています。
(ユネスコの世界遺産に登録されている「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」の一部)


螺旋階段で地下18メートルまで下り、歴史やワインの製法に触れながら、遺跡を見て回ります。

4世紀頃のガロ・ロマン時代には、ここは彫刻や石造建築などのための石灰岩を切る石切場でした。
それから約900年後、その上にサン=ニケーズ修道院が建ち、石切場だった巨大な穴は地下室として利用されるように。
その後、地下室、地下聖堂、ベネディクト会修道士が醸造していたワインを保存するためのカーヴをつなぐ地下通路になったそうです。
しかし、18世紀のフランス革命時に地上の修道院の部分は破壊され、地下のみが残りました。
この遺跡は150年間放置されていましたが、1920年代にシャンパーニュ・ハウスの到来によってよみがえり、戦後、テタンジェがこの地を購入して拠点としたと。
そのような歴史を経て、現在ではテタンジェがカーヴとして利用するとともに、アールデコ様式が保たれたこの建物には毎年6万人以上の訪問客が訪れているということです。
壮大……!!!

これら全て、熟成中のシャンパン。
全体では何百万本もの数になるとか。


テタンジェ・ファミリー
多くのシャンパーニュメゾンが巨大資本のグループに属するなか、テタンジェは大規模メゾンにも関わらず家族経営を続けている数少ないメゾンである点も特徴的です。


テイスティング
見学後は、お待ちかねの試飲!
2種飲ませていただきました。
上品であっさりめの味わい、という印象。おいしかった~~♡
よく歩き、よく学んだ後の泡は、髄まで染みわたります!!


〈参考〉
●テタンジェ公式サイト https://www.taittinger.com/en/visit
●サッポロビール公式サイト「テタンジェブランドストーリー」
マム G.H.MUMM
テタンジェの後に食事を挟み、同日2軒目のメゾンへ。
赤いリボン帯のボトルデザインが特徴の大手シャンパンメゾン、マムです。

F1の公式シャンパンとして有名に
F1の表彰台でレーサー達がシャンパンを掛け合う「シャンパン・ファイト」で使われる公式シャンパンとして、その知名度を上げました。
※2016年にはF1は15年にわたりオフィシャルスポンサーを務めたマムとの契約を終了し、現在は「CARBON」というシャンパンが公式とのこと。
〈参考:auto sport web〉

コルドン・ルージュの赤と白
マムの顔とも言える代表的シャンパン「コルドンルージュ」。
かつてのラベルが白地に赤色の斜めリボンが描かれたデザインだったため、赤と白の組み合わせがブランドカラーとなっているようです。
施設のそこここに赤と白が。おしゃれである…!
赤のリボンのラベルデザインは、フランスで最も権威ある勲章の受賞者に授与される赤色の綬 (フランス語でコルドン ルージュ) から着想を得たそう。


マムは、1827年ドイツのマム一族によってシャンパーニュの地にて創業。1900年頃から世界各国の王室にも愛されるようになり、今でも英国ではエリザベス女王御用達のワインなのだとか。
F1でのシャンパンファイトでのイメージもあり、「栄光」「成功」「歓喜」などのイメージの強い、輝かしい印象のシャンパンです。

創業時からワイン製造の際に使われてきた器具などが集められた部屋もあり、その歴史と変遷が感じられます。


テイスティング
これまた赤白が基調となったおしゃれスペースでテイスティング。
こちらもあっさりと飲みやすいお味でした。おいしい!
そして、ガイドの女性が明るくて可愛くて、とても好みでした…

〈参考〉
●マム公式サイト https://www.mumm.com/ja-jp/homepage
●シャンパーニュ専門店マチュザレム
ポメリー Pommery
日を改め、3軒目のメゾン、ポメリー社へ。



とにかくまず外観がすごい。
美しいブルーの外壁、広々とした庭園、立派な門。もう、お城やん…!!
一番テンション上がりました。ファンタジー!

中に入ると、様々な展示が。カーヴ見学の前に、このフロアだけでも十分楽しめるほどの充実っぷり!



マダム・ポメリーの偉業と、アート
ポメリーの創業は1836年。1858年から事業を引き継いだマダム・ポメリーによって大きく繁栄しました。
マダム最大の功績は、世界で初めてブリュット・ナチュール(糖分を添加しない辛口のシャンパン)を造ったこと。
「シャンパンは甘口の食後酒」という認識だった当時においてそれは画期的な発表であり、ブリュット・ナチュールの登場によってシャンパンの消費量が爆発的に増加したそう。
そして、マダム・ポメリーがシャンパンと同じく愛していたのが、アートです。
ミレーの名画「落穂拾い」を匿名で購入し、国へ寄贈したり。
若く無名のアーティストを支援し、その作品をポメリーのカーヴ内で展示したり。
展示作品の中には、ローマ神話のワインの神「バッカス」が描かれた巨大なレリーフや、アール・ヌーヴォーを代表するエミール・ガレによる「10万人分のシャンパーニュが入る大樽」などの大作も。


「シャンパーニュを造ることは芸術を造ること」。
マダム・ポメリーの情熱は今も継がれ、2003年から毎年「エクスペリエンス・ポメリー」と題した現代美術の祭典を開催。
地下カーヴに、世界中の新進気鋭のアーティストの作品を展示されています。


テイスティング
ポメリーのブランドカラーである綺麗なブルーの試飲スペースで、テイスティング。
売店のアイテムも充実しており、シャンパンの他、トートバッグやピンバッチなどのオリジナルグッズもたくさん!
ポメリーブルーの色味が美しい、ブランケットにもなる素敵なシートを購入しました。

〈参考〉
●ポメリー公式サイト https://pommery.jp/
●パリマグ
メゾン見学に必要なものと注意点
カーディガンなどの上着
地下カーヴはだいたい室温約10度。テタンジェにおいては、公式サイトに「摂氏2度」と書かれていました。
私が訪れたのは6月で、地上では毎日半袖でちょうどいいくらいの気温でしたが、地下はやはり寒い!!
カーディガンやパーカー、薄手のコートなど、何か羽織れるものを持って行かれるのがいいと思います。
(私は1日めのテタンジェ見学の際にうっかり上着を忘れてしまい、かなり体を冷やしてしまいました…)
ある程度の語学力(英語・フランス語)
3社ともツアーは英語とフランス語のみの対応で、日本語でのガイドはありません。
難解な専門用語ばかりというわけでもないですし、歩いてモノを見ながら楽しく説明してくださるので、なんとなく意味がわかればOKかと思います。
私も英語がすごく得意ということもなく、聞き取れなかった部分もたくさんありましたが、とても楽しめました!
ある程度のリスニング力があれば問題ないかと。
なんなら言葉がわからなくても、ミュージアムのような空間を見て歩いて楽しめれば、それが正解だと思います!
ただ、「もっと英語が理解できればさらに深く魅力を感じられたのかもなぁ」とも思えたので、語学力はあるに越したことはないなと。勉強しよ。
まとめ:メゾンの個性が光る、ミュージアムのようなカーヴ見学で、優雅なひと時を。

テタンジェ、マム、ポメリー。
3社ともまったく色の違う独自性があり、それぞれとても見応えがありました。
遺跡であったり、美術館であったり。
ワイナリーであると同時に、観光名所としての目線も大切にされているのだなと感じました。
2020年9月現在、見学予約は3社とも受け付けているようです。(マスク着用必須)
コロナ禍でなかなか気軽に海外に行ける環境ではなくなってしまいましたが、また本場のシャンパン飲みに行きたいなぁ…
素敵な思い出を胸に、次に訪ねられる日を楽しみにして。
日々の生活をがんばります!!
以上です!読んでくださりありがとうございます!!
〈おわり〉